副業会社員向け:初めての確定申告を効率的に進めるステップバイステップガイド
副業収入を得ている会社員の方で、初めて確定申告が必要となり、何から手をつけてよいか分からないと感じている方は少なくないでしょう。本業と両立しながら正確に手続きを進めるためには、効率的な方法を知ることが重要です。
この記事では、副業収入がある会社員の方が初めて確定申告を行う際に役立つ、準備から提出までの具体的なステップを解説いたします。確定申告の基本的な流れや必要書類、効率的な進め方について理解を深め、スムーズな申告をサポートいたします。
1. 副業会社員の確定申告、その前に知っておくべきこと
副業収入がある会社員の方が確定申告を行う上で、まず押さえておくべき基本的な知識を確認しましょう。
1.1. 確定申告が必要となる条件
会社員の方の場合、給与所得以外の所得が年間20万円を超える場合に確定申告が必要です。この「20万円」という基準は、副業による収入から経費を差し引いた「所得」の金額を指します。例えば、副業収入が50万円あっても、経費が35万円かかっていれば、所得は15万円となり確定申告は不要です。
しかし、所得が20万円以下であっても、医療費控除やふるさと納税による寄付金控除などを適用し、還付金を受け取りたい場合は確定申告を行うメリットがあります。
1.2. 所得の種類:雑所得と事業所得
副業の所得は、主に「雑所得」または「事業所得」のいずれかに分類されます。
- 雑所得: 事業規模ではない副業からの所得や、公的年金などの所得が該当します。副業が単発的、あるいは収入額が少額の場合に多いです。
- 事業所得: 継続的に行われ、独立して営まれている事業からの所得を指します。反復継続して収入を得る活動であり、社会通念上事業と認められる規模であることが基準となります。
事業所得として申告すると、青色申告特別控除や赤字の繰り越しといった税制上の優遇措置を受けられる可能性があります。しかし、事業所得として認められるためには、事業計画の有無、帳簿付けの状況、所得の規模などが総合的に判断されますので、ご自身の副業がどちらに該当するか不明な場合は、税務署や税理士に相談することをお勧めいたします。
2. 【ステップ1】確定申告に必要な書類を準備する
確定申告をスムーズに進めるためには、事前に必要な書類をきちんと準備しておくことが大切です。
2.1. 本業に関する書類
- 給与所得の源泉徴収票: 会社から発行される、1年間の給与収入や所得税の源泉徴収額が記載された書類です。通常、年末調整後に発行されます。
2.2. 副業に関する書類
- 収入がわかる書類: 副業の報酬明細書、銀行口座の入出金記録、支払い調書(フリーランスとして企業から受け取る場合など)など、1年間の収入額が確認できるもの。
- 経費の領収書・レシート: 副業に関連する交通費、通信費、消耗品費、書籍代、セミナー参加費などの領収書やレシートを整理しておきます。
2.3. 控除に関する書類
適用する可能性のある控除項目に応じて、以下の書類が必要になります。
- 社会保険料控除証明書: 国民健康保険料や国民年金保険料を自身で支払っている場合。
- 生命保険料控除証明書: 生命保険会社から送付されます。
- 医療費控除の明細書: 1年間の医療費が一定額を超えた場合。
- 寄付金控除に関する証明書: ふるさと納税やNPO法人への寄付などを行った場合。
- 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)に関する書類: 初めての申告時や年末調整で対応しきれない場合。
- iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金払込証明書: 個人でiDeCoに加入している場合。
これらの書類を一つにまとめておくと、後の作業が効率的になります。
3. 【ステップ2】収入・経費を整理し、帳簿付けを行う
書類が揃ったら、次は副業の収入と経費を整理し、帳簿付けを行います。これは確定申告書を作成する上での土台となる重要な作業です。
3.1. 収入と経費の分類と集計
副業の収入と、それにかかった経費を、それぞれ適切な勘定科目に分類し、1年間の合計額を集計します。例えば、通信費、交通費、消耗品費、外注費、研修費などが経費として考えられます。
3.2. 効率的な帳簿付けの方法
- 会計ソフトの活用: 弥生会計、freee、マネーフォワードクラウドなどの会計ソフトは、銀行口座やクレジットカードと連携して自動で仕訳を行ってくれる機能があり、大幅な時間短縮と正確性の向上に繋がります。初めての方でも操作しやすいように設計されているものが多いです。
- Excelでの管理: 簡易的な副業であれば、Excelを使って収入と経費をリストアップし、集計するだけでも十分対応可能です。ただし、ある程度の簿記の知識が必要になる場合があります。
経費計上にあたっては、副業に直接関連する費用のみが認められます。プライベートと共用している費用は、按分計算(副業で使用した割合に応じて費用を計上すること)が必要です。不明な点があれば、税務署や税理士にご確認ください。
4. 【ステップ3】確定申告書を作成する
収入と経費の整理が完了したら、いよいよ確定申告書の作成です。
4.1. 主な確定申告書の作成方法
- 国税庁のウェブサイトを利用する: 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」は、画面の指示に従って金額を入力するだけで確定申告書を作成できます。e-Tax(電子申告)にも対応しており、自宅から提出可能です。
- 確定申告ソフトを利用する: 前述の会計ソフトには、作成した帳簿データをもとに確定申告書を自動作成する機能が搭載されているものが多く、初心者でも迷うことなく作成を進めることができます。
- 税理士に依頼する: 複雑なケースや時間がない場合は、税理士に依頼することも一つの選択肢です。専門家によるサポートで、正確かつ安心して申告を完了できます。
4.2. 確定申告ソフトの選び方と活用メリット
確定申告ソフトは、初めて確定申告を行う方にとって非常に有用です。
- メリット:
- 入力の簡略化: 質問形式で進めるため、何を入力すべきか迷いにくいです。
- 自動計算: 税額が自動で計算されるため、計算ミスを防げます。
- e-Tax連携: 作成したデータをそのままe-Taxで提出できるため、印刷や郵送の手間が省けます。
- 記帳の効率化: 銀行口座やクレジットカードとの連携により、日々の取引入力が簡単になります。
- 選び方のポイント:
- 操作性: 初心者でも使いやすいインターフェースか。
- サポート体制: 疑問点が生じた際に、電話やチャットで相談できるか。
- 機能: 青色申告に対応しているか、必要な控除に対応しているか。
- 価格: 無料プランやトライアル期間があるか、月額費用は予算内か。
5. 【ステップ4】確定申告書の提出と納税(還付)
確定申告書が完成したら、いよいよ提出と、必要に応じて納税または還付金の受け取りを行います。
5.1. 確定申告書の提出方法
- e-Tax(電子申告): マイナンバーカードとカードリーダー、またはID・パスワード方式を利用して、インターネットを通じて提出します。最も手軽で推奨される方法です。
- 郵送: 所轄の税務署宛に郵送します。申告期間最終日の消印有効です。
- 税務署の窓口に持参: 税務署が開庁している時間に直接持ち込みます。
5.2. 納税または還付金の受け取り
- 納税:
- 振替納税: あらかじめ指定した銀行口座から自動で引き落とされる方法です。
- クレジットカード納付: 国税庁のウェブサイトからクレジットカードで納付できます。
- コンビニ納付(QRコード): 特定のコンビニエンスストアで納付できます。
- 金融機関の窓口: 納付書を利用して金融機関の窓口で納付します。
- 還付金: 払いすぎた税金がある場合は、指定した銀行口座に振り込まれます。通常、提出後1ヶ月〜1ヶ月半程度で振り込まれます。
6. 会社への影響と住民税対策
副業が会社に知られることを心配される方もいらっしゃるかもしれません。主な原因となるのは住民税の通知です。
6.1. 住民税の仕組みと普通徴収への切り替え
住民税は、原則として給与所得から天引き(特別徴収)されます。しかし、副業所得にかかる住民税を給与から天引きされると、会社に住民税額の増額が通知され、副業が発覚する可能性があります。
これを避けるためには、確定申告書第二表の「住民税に関する事項」欄で、「給与・公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法の選択」を「自分で納付(普通徴収)」にチェックを入れるようにしてください。これにより、副業分の住民税は自宅に送付される納付書で自身で納める形となり、会社に知られるリスクを軽減できます。
ただし、自治体によっては普通徴収ができないケースも稀に存在しますので、念のためお住まいの自治体にご確認いただくことをお勧めいたします。
7. よくある疑問と注意点
- 確定申告を忘れたらどうなりますか?
- 期限後申告となり、無申告加算税や延滞税が課される可能性があります。気付いた時点で速やかに申告するようにしてください。
- 困ったときの相談先は?
- 税務署の相談窓口や、税理士にご相談ください。国税庁のウェブサイトにも詳細な情報が掲載されています。
- 最新の税法改正について
- 税法は毎年改正されることがあります。最新の情報は国税庁のウェブサイトで確認するか、専門家にご相談ください。
まとめ
副業収入がある会社員の確定申告は、初めての方には難しく感じられるかもしれませんが、ステップを踏んで着実に進めれば決して難しいものではありません。
この記事でご紹介した準備から提出までのステップを参考に、ぜひ早めに書類の整理を始め、効率的な確定申告ソフトの活用も検討してみてください。副業分の住民税を普通徴収にすることで、会社への影響を最小限に抑えることも可能です。
ご自身の状況に合わせて、不明な点は税務署や税理士に相談し、正確でスムーズな確定申告を目指しましょう。